名古屋へ逃げた探偵さん
 知り合いに

なんか不思議ですよね。
あの飲み会で、カレの職業を聞いてから、わたしは興味津々で、自分の席には戻らず、ずっとカレの隣りで話しを聞いていたのです。
“今って、守秘義務の徹底をうるさく言われてるから、あまり個人名とか場所とかまでは話せないんだけど・・・。”という前置き付きで話しをされると、これがまたリアルさを増す。
結局、その飲み会が終わるまでカレの隣りにいたのでした。

わたしはまだまだ話しを聞きたいばっかりだったのですが、カレは寝不足を理由に二次会には参加せず、帰るというのです。
それが、嫌そうに帰るのではなく、その場にいたみんなに気を使いながら、本当に申し訳なさそうに参加できないことを謝っていたので、それがすごくいい人に見えたんですよ。
また機会があればお話ししたいから、と、この日はとりあえず連絡交換しました。
探偵さんのお話しを聞けなくなってからの二次会はつまらないものでした。
思わず、自分が参加したくなかったことを思い出してしまったくらい。

まぁ、でもこの飲み会で探偵さんと知り合えたことは、きっと参加して良かったのだと思って、一応楽しそうにはしていましたけどね。
この飲み会を企画した友達にも後日、指摘されました。
カレを狙っているのか、なんて。

まだ何時間かお話ししただけだし、狙うもなにもありませんでしたが、探偵さんの知り合いが出来たことはちょっと自慢になりそうな気もするし。
とりあえず、仲良くなってみたい、とだけ答えておきました。

せっかく教えてもらった探偵さんの連絡先ですが、なかなか電話するのって難しいですよね。
最初は飲み会でのお礼と、その後の体調なんかを聞いたメールをしてみたのです。
お休みの朝に。
でも、彼からの返信があったのがその日の夜。
なかなか来ない返事に、覚えていないのか、失礼なことを書いてしまったのか、と、心配していましたが、そのうちそれすら忘れてしまってから返信がきたのです。

“すみません!!!今日はポスティングしていて、1日汗だくで走り回っていたので、携帯電話を見ることもありませんでした!”と。
絵文字少なっ!
汗マークがひとつ入っているだけでした。
それすら、“さすが探偵さん。ちゃらちゃらしてないんだ”なんて、めちゃくちゃプラス思考になってたんですね。

ポスティングという言葉を初めてきいたわたしは、それすらすごい言葉のように感じたのですが、これって、ただのチラシ配りのことだったんですね。

カレのメインの仕事である、チラシ配りの。
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